北欧からのものがたり
春を告げる白いアネモネの花
森に白いアネモネの花が咲き誇ると、春が来た証です。この可愛らしい小さな花はスウェーデン語で「vitsippor(ヴィッチポール)」と呼ばれ、何世紀にもわたって人々に愛されています。
アネモネが咲く時期は?
スウェーデンに春がやってくるのは、住んでいる場所によって異なりますが、4月から5月にかけてです。森のあちこちに「vitsippor(ヴィーチポー)」が顔を出し始めると、人々は春の訪れを感じます。アネモネは4月の終わりから5月の終わり頃まで咲き続け、地面を真っ白に美しく埋め尽くします。
スウェーデンで咲くアネモネには、白と青の2種類があります。白いアネモネは自由に摘むことができ、春には至る所で見られます。一方で、青いアネモネは「blåsippor(ブローシポー)」と呼ばれ、青みがかった紫色をしています。こちらは自然に残された数が少ないことから、法律で保護されており、摘み取ることができません。青いアネモネが保護の対象であることはスウェーデンではよく知られており、そっとしておいてほしいと告げる歌まであるほどです。
スウェーデンの人々がアネモネを摘む理由
白いアネモネを摘むのは、昔からの伝統です。スウェーデンの人々は野生の花をさっと摘んで飾るのが得意ですが、この小さなアネモネもブーケとなり、多くの家庭の食卓を飾ります。それは家の中に春を迎え入れる習慣のようなもの。子どもたちは花を摘んでは家に持ち帰り、両親にそれを渡すのです。
また、アネモネには、その昔、子どもたちが花を摘んで小さなブーケを作り、道端で売っていたという歴史もあります。人々はそこで馬車を停め、スウェーデンの最も小さな単位の硬貨「öre」1枚でそのブーケを買ったといいます。当時の子どもたちはちょっとしたお金を稼いで家計を助けていました。この様子は、映画『Glassblower’s Children』や、長くつ下のピッピの作者、アストリッド・リンドグレーンの名作『Emil i Lönneberga(邦題:エーミル)』といった作品の中にも描かれています。