北欧からのものがたり

8月のザリガニパーティー

スウェーデンのザリガニには旬があり、8月の始めから9月の終わりにかけてザリガニ捕りが盛んに行われます。そのためスウェーデンでは、ザリガニ捕りの伝統を祝い、夏の終わりに「kräftskiva(クレフトシーヴァ)」というパーティーを開きます。

ザリガニパーティーの歴史

スウェーデン語でザリガニは「kräftor(クレフトル)」と言い、パーティーの名前の「kräftskiva(クレフトシーヴァ)」もこれに由来しています。スウェーデンでは昔からザリガニ捕りが盛んでしたが、スウェーデンのザリガニが絶滅することを恐れ、1920年代に政府はザリガニの収穫を規制しました。

それ以来、ザリガニ捕りが解禁されるのは8月と9月にだけになりました。こうしてシーズンの幕開けと同時に皆でザリガニ捕りを楽しみ、お祝いする伝統が根付いたのです。今でもこの伝統は残っており、家族や友人たちが集まって美味しい料理を囲みます。もちろんこのパーティーでも他のお祝い事と同じように、スウェーデン人お得意のちょっと変わった帽子とおかしな歌が登場します。

Friends cheering at crayfish party.

ザリガニ捕りへ行こう

パーティーのテーブルの主役であるザリガニが自分で捕ったものならなお最高です。目覚まし時計と専用のかご、そして充分な時間さえあれば、ザリガニ捕りはそれほど難しくはありません。

ザリガニ捕り用のかごは長い筒のような形をしており、その入口は、一度かごに入ったザリガニが逃げ出さないような作りになっています。かごの中に魚の頭など、ザリガニが喜びそうな餌を入れ、長い糸か細いロープを結びます。そのかごを夜のうちに海や湖に沈めます。このとき必ず水の底に着くまで沈めましょう。ロープを木など固定できる場所に結び、朝になったらかごを確認します。

時間をかけるとザリガニがたくさん捕れると思われるかもしれませんが、待ちすぎも禁物です。なぜなら何日間もかごを放置すると、ザリガニがお互いを食べ始めることもあるからです。また、死んでしまったり、状態が悪くなってしまったりすることもあります。翌日の朝(または2日後の朝)に早起きをしてかごを回収し、ザリガニを捕るをおすすめします。

最後に1つ補足を。生きたザリガニは暗い灰色か黒っぽい色をしています。調理するとちゃんと見慣れた赤色になるので、ご心配なく。

Wooden bucket and trap for crayfishing.

ザリガニパーティーの飾りつけ

ザリガニパーティーの飾りつけはとても特別なものです。この行事のための飾りを引っ張りだしてきて、スウェーデンの人々はとことん飾りつけます。ここでは、ザリガニパーティーで正式な装飾を行うための必需品を紹介しましょう。

  1. テーブルクロスをかけた長いテーブル(人が多ければ多いほどパーティーは楽しいもの)
  2. 紐で繋げた色とりどりの小さな旗
  3. 紙で作られ、笑顔が描かれた丸い提灯のようなランプ
  4. ザリガニの形を紙で作った吊るし飾りをたくさん
  5. 食べるときに使うエプロン(もちろんザリガニの絵が描かれたもの)
  6. 小さなパーティー帽(お察しのとおり、絵柄は… ザリガニ!)

この他に、歌の本などを置いて、テーブルを飾っても構いません。スウェーデンでは、スナップスという蒸留酒を飲む前に、短い歌を歌うという習慣があるためです。風変わりで奇妙な、そしてちょっぴり下品な歌がよく歌われ、高い声で歌うほど皆に喜ばれます。ザリガニパーティーでは、こうした短い歌の歌詞を自分でアレンジするという伝統があります。個人的なエピソードを加えたり、みんなが楽しめる歌詞にしたりして、楽しみます。

なお、ザリガニは手で食べるので、ナプキンを大量に用意するのをお忘れなく。

Table decorated for crayfish party.